ヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラム
 日本人学生対象

 

「アイルランド・イギリスでの一年間」

杉浦 哲郎

ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ2007参加
SBD社(イギリス)にて企業研修
応募当時、工学部先端工学基礎学科 在籍

 

1.はじめに

私は2007年4月から1年間「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ2007」に参加しました。私が1年間の海外留学に興味を持った理由は、外国語を本気で勉強しながら海外の文化に直に触れて自分の視野を広げようと思ったからです。そして、このプログラムを選んだ理由は、語学研修と企業研修の二つの経験ができるため、自分が勉強したかった内容が学べるということと、奨学金により成り立っているプログラムなので費用がほとんどかからないということです。私は、このプログラムに参加する以前に、1ヶ月の短期留学や国内のインターンシップを何度か経験していました。それらはどれも素晴らしい内容でしたが、費用が高いことや期間が短いことが欠点となっていました。そのため、このヴルカヌスプログラムを見つけた時は、これしかないと思い、すぐに応募を決めました。このプログラムを終えて1年経った今、改めて参加して良かったと心から感じています。

2.ベルギー

ベルギーのブリュッセルでは、このプログラムのメンバーが全員集まり、欧州の歴史や欧州の現状について勉強しました。ここで得た知識は、その後の1年間で欧州の基礎として常に役立ちます。また、同期のメンバーや事務所のスタッフの方々と仲良くなるチャンスでもあります。この欧州研修での経験が、1年間の生活を大きく変えると言っても過言ではありません。海外が初めての人も、そうでない人も、ここでお互いに意見や知識を交換し、それぞれの国へ旅立っていく準備をします。私は、この3日間でまず欧州の雰囲気に慣れ、積極的に色んなことへ挑戦していこうという気持ちを抱くようになり、欧州研修後のアイルランドでの生活に期待感を高めながら過ごしました。

 

欧州研修にて

 

3.アイルランド

語学研修として、アイルランドの首都ダブリンにてホームステイをしながら英語の語学学校に約4ヶ月間通いました。私は、アイルランドという国についての知識がほとんどない状態で暮らし始めたため、全てのものが新鮮でした。
私が生活の中で印象に残っていることとして、一つ目に「人」があります。ダブリンの中心地には、私が通っていた語学学校の他にもいくつか同様の語学学校があり、たくさんの留学生が住んでいました。またヨーロッパの人々にとっての観光地としても有名なため、街には様々な国から来た人々であふれていました。そのため、外国人だからという理由で何かを制限されるということはなく、初めての私でも住みやすい街でした。
二つ目は、「公共交通機関」です。アイルランドは国土が北海道と同じくらいで小さいため、主要都市間をバスや電車で移動することができます。アイルランドの田舎には素晴らしい自然がたくさんあり、バスで巡るツアーなどが多く存在します。また、ダブリンの市街地は、地下鉄が整備されておらず、代わりに市バスがたくさん運行しています。しかし、バス停では手を挙げてバスを止めなければいけないこと、小銭でちょうどの金額を持っていないと乗車できないこと、10分や20分の遅れは当たり前ということなどが日本とは異なっていました。そのため、初めは苦労しましたが、慣れてしまえば便利な公共交通機関でした。
三つ目は、「お酒」です。アイルランドにはパブと呼ばれる酒場が至る所に存在し、昼夜を問わずたくさんの人達がお酒を飲んでいます。私は、ホームステイ先のルームメイトと夕食後によくパブにでかけていました。また、語学学校の先生と一緒にパブに行くこともありました。初めはパブでお酒を飲むことに慣れておらず少し抵抗はありましたが、いつもより気軽に英語を話すことができたり、直接現地の人の話を生の英語で聞くことができたりと、意外にも英語をより上達させることができました。

4.語学学校とホームステイ

私が通っていた語学学校は、首都ダブリンの中心地にあり、またホームステイ先も中心地からバスで約15分、国際空港から約20分の距離にありました。そのため、買い物や旅行などがしやすく、頻繁に外出していました。平日には語学学校に通い、休日にはクラスメイトと買い物に出かけたり、ダブリンの郊外を旅行したり、なるべく英語を話す環境にいるようにしていました。
私のホストファミリーはおしゃべり好きなお婆さん一人の家庭で、そこに私を含めた6人の留学生が一緒に生活を送っていました。夕食はいつも全員揃って食事をし、その日にあった出来事や学んだことを話し合っていました。私は最初の頃、他の留学生に比べて英語が話せず黙りがちになっていました。しかし後に、間違っていても積極的に話すことが重要で、それが上達に繋がるということに気付いてからは、自分からよく話すようになり、夕食が待ち遠しくなるほど楽しい時間になっていきました。
また、月に一度、他の国で研修しているプログラムのメンバーに会いに行き、お互いの語学の勉強状況や新しく学んだことなどを中心に情報を交換し、メンバー全員がそれぞれの国で奮闘していることを肌で感じることができました。これにより、語学研修中に辛いことがあっても、落ち込んだりせず前向きに頑張り続けることができました。

 

ダブリンでのホストファミリー

 

5.イギリス

アイルランドでの研修後、イギリスのミルトンキーンズにあるSBD社で企業研修を行いました。SBD社は、自動車のセキュリティやテレマティックス分野を専門とするコンサルタント会社で、私はテレマティクス部に配属されました。
仕事を通して一番感じたことは、上司と部下という関係が見えないということです。会社の中では、先輩や後輩に関わらずお互いにニックネームで呼び合い、会議やプレゼンでも自由に意見を言い合います。私が特に驚いたのは、部長が私と同じような研修生からもニックネームで呼ばれていたことや、時には、私達のためにコーヒーやお茶を進んで入れてくれたことです。今まで日本企業でのインターンシップを二度経験していた私にとって想像すらしていなかったことでしたが、その分新鮮でとても働きやすいと感じました。
また、私が会社で唯一の日本人でした。そのため、私が社員のために何かできることはないかを考えたとき、思いついたのが日本の文化を知ってもらうこと、特に「日本語」と「日本食」を紹介しようと考えました。朝、早起きをしておにぎりやおみそ汁を作り、ランチの時に社員にご馳走しました。これにより、普段はあまり話さない社員とコミュニケーションをとる機会が増え、会社での存在感をより感じるようになりました。また、社長にお願いをして会議室を貸し切り、仕事の合間を利用して日本語教室を5回開きました。やはり日本の企業と連絡を取ることが多い社員の方には好評で、覚えてきた簡単な挨拶を私に使ってくれたり、社員に次のレッスンはまだかと尋ねられるたびに嬉しくなり、日本語教室を開いて良かったと思うようになりました。

6.ハウスシェア

イギリスでは、一軒家をルームメイトと借りて共同で生活をする「ハウスシェア」を選びました。理由は、家賃が非常に高いため一人暮らしをする余裕がなかったことと、フラットシェアではルームメイトとの繋がりが希薄になると考えたからです。実際に、私が借りた一軒家はリビングやキッチンが大きく非常に住みやすかったので、特に不満な点はありませんでした。ただ、イギリスの冬は長く、とても寒いです。寒がりである私にとっては部屋の窓が薄く、暖房器具もラジエーターと呼ばれる温水パネルヒーターしかありませんでした。一時期、暖房器具が故障してしまい、大家さんに修理をお願いしようとしたところ、旅行中により連絡が取れないことがありました。このような時でも、ルームメイトに相談して解決できたのは、やはり普段からの親密なコミュニケーションのおかげだと感じました。
私の借りた家の近くには会社の同僚が住んでおり、仕事の付き合いだけでなく、よく一緒にスポーツをしたりパブへ飲みに行くことがありました。私が住んでいた街は田舎だったので、パブには地元の人が多く、パブゲームやパブスポーツと呼ばれる伝統的な遊びを体験することができました。中でも興味深かったものが、様々な分野から出題される問題に対してチームで回答を競う「パブクイズ」で、同時にイギリスの歴史や文化を学ぶこともできました。

 

イギリスでのハウスシェア

 

7.帰国後

私は、1年間の研修を終えて帰国した後、大学院に復学しました。想像していたよりもスムーズに元の生活に戻ることができ、新しい生活にもすぐに慣れることができました。また、留学する以前よりも時間の使い方や人の接し方が上手になっており、普段の何気ない生活の中からも面白さを見出すようになりました。
プログラムのメンバーとは、定期的に連絡を取ったり、時には東京に集合してお互いの状況を話し、常にお互いを刺激し合っています。また、研修していた企業の子会社が私の地元にあり、夏には個人的にインターンをさせて頂くこともできました。それにより、帰国後でも研修企業の方と連絡を取りながら、さらに関係を深めていくことができました。このような経験が、後の就職活動でも非常に役立ちました。
帰国して1年が経ち就職活動の時期になった際、留学していた頃の経験から、専攻分野に拘らず幅広い分野の企業を視野に入れて企業選びをしようと考えました。その結果、自分の知らなかった興味深い分野に出会うことができたり、曖昧になっていた自分のやりたいことが明確になったと思います。工学部の機械系だった私にとって、金融、放送、、映画、医療などの分野に興味を持ち企業を見て回るという経験はとても新鮮で、かつ今後の生き方に大きく影響を与えるものになりました。

8.最後に

このプログラムに参加して私は本当に大切なことを学んだと感じています。それは「人と人との繋がり」です。この1 年間、面白いことは一緒に楽しみ、辛いことは助け合って乗り越え、競う時にはライバルとして戦いながら、お互いに刺激し合って過ごした同期のメンバーは、何にも代えられない財産です。また、語学学校の先生、ホストファミリー、研修企業の社員、ルームメイト、さらには日本から私たちを支えてくれたプログラムのスタッフ、家族や友人の大切さを改めて感じました。このような人と人との繋がりを通して、私は自分自身のことを改めて見つめなおすことができ、自分がやりたいこと、自分に足りないこと、自分がやるべきことなどを見つけることができました。
海外で自分を試したい、成長させたい、と考えているけれど、もう一歩が踏み出せないという方に伝えたいことがあります。それは、何事もやってみて欲しいということです。意識を変えることは簡単ではありませんが、動き出すことは難しいことではありません。そして、動き出せば、必ず何かが変わります。辛いことも多いですが、楽しいことのほうがもっと多いと思います。やらずに後悔したり諦めてやめてしまうより、何事も楽しむことを忘れないで積極的に挑戦していって欲しいと願っています。

 

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日欧産業協力センターにおける政策分析を担う特別研究員(ミネルヴァ・フェロー)を募集しています。研究員は日欧産業協力センターが指定する優先課題(主に経済・産業関係のテーマ)について調査・分析等を行い政策レポートを作成します。そのほかにも、メディアのモニタリング、政策ブリーフィング、セミナーレポートなどセンターの政策分析活動の補佐をします。
30/03/2018
ヴルカヌス・イン・ヨーロッパは、日欧産業関係の架け橋となる若手人材の育成を目的とした「企業インターンシップ」事業です。毎年20名程度の日本の理工系大学生を欧州へ派遣しています。学生の募集要項はこのホームページで随時お知らせします。

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