本ページでは、投資に関連するネット・ゼロ産業法(NZIA)の概要および企業向け支援制度(NZIAに基づく戦略的プロジェクトの募集)に関する詳細を掲載しています。

(DG GROW, 2025)
ネット・ゼロ産業法(NZIA)に基づく戦略的プロジェクトの募集について
2024年6月29日、ネット・ゼロ産業法(NZIA)は、EUにおけるネット・ゼロ技術製品の製造基盤を強化し、規制枠組みの簡素化と投資環境の改善を目的として制定されました。
本規則は、欧州グリーンディールが掲げる2050年気候中立目標の達成に向け、EU域内におけるネット・ゼロ技術の製造能力を拡大するとともに、質の高い雇用の維持・創出、エネルギー供給の安全性および価格の安定性の確保を図るものです。同時に、NZIAは単なる気候政策にとどまらず、ネット・ゼロ技術における域外依存の低減、単一市場の分断回避、およびサプライチェーンの強靭化を通じた経済安全保障と産業競争力の強化を目的とする産業政策として位置づけられています
欧州委員会は2025年5月23日、フィードバック募集を通じてNZIAの第二次法令を公表し、以下の追加措置を提示しました。これは、公共調達やオークションにおいて、どのプロジェクトが迅速な許認可や戦略的プロジェクトの地位、非価格基準の適用対象となるかを明確化するものです。
・ネット・ゼロ技術の要件が適用される主要部品の明確化
・非価格基準(責任ある企業行動、サイバーセキュリティ、持続可能性等)の具体化
・戦略的プロジェクト選定に関する加盟国間での統一基準の設定
NZIAは、EUの脱炭素化および産業競争力の強化に不可欠な分野として、以下の8つの戦略的ネット・ゼロ技術を特定しています:
・太陽光発電および太陽熱技術
・陸上風力および洋上再生可能エネルギー
・バッテリーおよび蓄電技術
・ヒートポンプおよび地熱エネルギー技術
・電解装置および燃料電池
・持続可能なバイオガス/バイオメタン技術
・二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術
・電力系統関連技術(スマートグリッド、EV充電インフラ等を含む)
■ NZIAの主な規定
1. 製造能力の拡大と供給安全保障の確保
ネット・ゼロ製品の製造能力について、2030年までにEU域内需要の40%以上を賄うことを目標(ベンチマーク)として設定しています。また、ネット・ゼロ技術のサプライチェーン全体における供給安定性を確保するため、域内製造基盤の強化と輸入依存の低減が図られています。さらに、石油・ガス事業者に対してはCO₂回収・貯留(CCS)に関する貢献が求められており、2030年までに年間5,000万トンのCO₂注入能力の整備が目標とされています
2. 持続可能製品への需要創出(公共調達の戦略化)
公共調達および再生可能エネルギーオークションにおいては、価格のみならず以下の要素が考慮されます:
・サプライチェーンのレジリエンス
・環境持続可能性
・イノベーション
・サイバーセキュリティ
また、特定第三国への過度な依存を回避するため、供給の多様化を促進する仕組みが導入されており、調達政策を通じた域内産業基盤の強化が図られています
3. 戦略的プロジェクト制度
NZIAの中核となる制度であり、以下の特徴があります:
・「ネット・ゼロ・ヨーロッパ・プラットフォーム」による支援
・行政手続きにおける優先的地位の付与
・InvestEU、STEP規則、IPCEI等を通じた資金調達支援
さらに、戦略的プロジェクトは:
・許認可手続きの迅速化(最長12か月)
・国家レベルでの優先案件としての位置づけ
・公共の利益として認定され得る枠組み
などにより、通常のプロジェクトよりも迅速な実施が可能となります なお、EU域内で実施されるプロジェクトであれば、第三国企業による申請も可能です。
👉 日本企業にとっても投資機会となり得る戦略的プロジェクトの申請はこちらから
4. 許認可手続きの簡素化・迅速化
ネット・ゼロ技術プロジェクトの展開を加速するため、以下の措置が講じられています:
・許認可期間の上限設定(通常12〜18か月、戦略案件は最大12か月)
・「単一窓口(Single Point of Contact)」の設置
・環境影響評価等の手続きの統合・効率化
これにより、従来2〜7年を要していたプロセスの大幅な短縮が図られています
■「ネット・ゼロ技術製造プロジェクト」の定義および評価の考え方
ネット・ゼロ技術製造プロジェクトとは、EU域内においてネット・ゼロ技術またはその主要構成要素の製造能力の新設、拡張、または転換を行うプロジェクトを指します。これらのプロジェクトは、EUにおけるネット・ゼロ技術の供給能力の強化、投資の促進、および単一市場の機能確保を目的として位置づけられています。
そのうえで、特に重要性の高いプロジェクトは「戦略的プロジェクト」として選定され、優先的な支援対象となります。戦略的プロジェクトの選定にあたっては、以下の観点から個別評価に基づき総合的に判断されます。
・特定の第三国への依存の低減など、EUの供給安全保障および産業レジリエンスへの貢献
・EU域内におけるネット・ゼロ技術の製造能力の拡大
・技術の持続可能性および性能の向上への貢献
・労働力の確保、スキル向上および再教育への取り組み
・低炭素かつ循環型の製造プロセスの導入
これらの要素は、EUの産業競争力およびサプライチェーンの強靭化に対する「追加的な便益」として評価されます
■ 追加的な評価要素
さらに、各プロジェクトは以下の点についても評価されます:
・EUの技術的および産業的レジリエンスへの潜在的な貢献
・ネット・ゼロ産業のサプライチェーンおよび川下産業への波及効果
・環境持続可能性、性能、循環性の向上を通じたEUの気候・エネルギー目標への貢献
また、実施規則においては、特に再生可能エネルギー関連のプロジェクトに関し、以下の観点が具体的に制度化されています:
・サプライチェーンの多様化(特定第三国への過度な依存の回避)
・サイバーセキュリティおよびデータセキュリティの確保
・責任ある企業行動(デューデリジェンス)
・プロジェクトの実行可能性および履行能力
これらは、公共調達やオークションにおける非価格基準として適用され、EUの供給安全保障および市場のレジリエンスを確保することを目的としています
既に承認された戦略的プロジェクトはこちらから確認できます。
経済産業省によるNZIAの要約(2024年6月)

「戦略的プロジェクト」ステータス申請にかかわる期限は?
ネット・ゼロ産業法(NZIA)に基づく戦略的プロジェクトの申請には、特定の提出期限は設けられておらず、プロジェクト推進者は随時申請を行うことが可能です。
申請は、まず対象となるプロジェクトが所在する加盟国に提出され、当該加盟国が申請内容を評価し、戦略的プロジェクトとして認定するかどうかを決定します。加盟国は、当該プロジェクトがEUの供給安全保障、産業競争力、気候目標等にどの程度貢献するかを踏まえ、できる限り迅速に判断を行うこととされています
加盟国が申請を却下した場合には、プロジェクト推進者は欧州委員会に対して再度申請を提出することが可能です。欧州委員会は、当該プロジェクトのEU全体への貢献を踏まえて評価を行います。また、加盟国と欧州委員会の評価に相違がある場合には、「ネット・ゼロ・ヨーロッパ・プラットフォーム」において、関係者間での調整や意見交換が行われます。
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背景を読む
・規則(EU)2024/1735(2024年6月13日採択、同年6月28日官報掲載)
・EU理事会プレスリリース「EUのグリーン産業の強化に向けた合意」(2024年2月6日、日本語要約)
・欧州委員会ウェブページ(NZIA概要、戦略的プロジェクト、Q&A等)
・欧州委員会成長総局(DG GROW)長 Kerstin Jorna氏 による、NZIA発効に関する公式発信(LinkedIn)
・Clifford Chance LLPによる分析「欧州ネット・ゼロ産業法」
・Strategy&による分析「EUネット・ゼロ産業法のインパクト(日本語)」
「NZIAの戦略的プロジェクト」ウェブサイトには、申請書、NZIA戦略的プロジェクトの「申請者のためのガイド」、申請手続きや戦略的プロジェクトのステータスが提供するメリットに関するFAQが掲載されています。ご質問は Eメール ec-nzia-strat-prj@ec.europa.eu までお寄せください。
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