◆EUにおける資金調達
EU では、EU 財政規則に基づき、域内で利用できる資金調達手段として、助成金(grants)、公共調達(procurements / public contracts)、金融商品(financial instruments:貸付・保証・株式等)、信託基金(trust funds)、賞金(prizes)、補助金(subsidies)など、さまざまな種類が設けられています。 当センターのウェブページでは、日本企業が EU でビジネスを開始・拡大する際の入口として、助成金・公共調達・金融商品を中心に情報提供を行います。
1. 主な資金調達手段の定義
助成金(Grants)
助成金は、EU 予算から拠出される直接的な財政支援であり、EU の政策目的に貢献する活動を行う第三者受益者(通常は研究機関や非営利団体等)に対し、寄付という形で付与される資金です。多くは欧州委員会によって管理され、委員会の各部局、EU 機関、もしくは各国の実施機関を通じて提供されます。助成金は、EU政策の達成に必要な活動(action)や組織運営(operating)を対象とし、応募の機会は主に 「提案募集(calls for proposals)」 として公表されます。
公共調達(Public Procurement)
公共調達とは、EU 機関や加盟国の行政機関が、公開の公共契約(public contracts)を通じて民間からサービス・物資・工事等を購入する仕組みです。助成金とは異なり、EU 機関は支払いの対価として具体的な製品やサービスを受け取る点が特徴です。事業の発注は 公共入札(public tendering) を通じて行われます。
金融商品(Financial Instruments)
貸付、保証、株式投資などの形態をとる支援です。助成金とは異なり、原則として返済義務がありますが、市場よりも有利な条件(低金利、低担保等)での調達が可能です。これらは主に、後述するInvestEU Fundを通じて提供されます。
2. InvestEU Fundの概要

InvestEU Fundは、助成金とは異なり、EU予算による保証(Guarantee)を通じて金融機関のリスクを軽減し、民間投資を呼び込む市場ベースの投資支援スキームです。従来の複数の金融商品を統合し、よりシンプルかつ柔軟な形で、EUの政策目標に沿った投資を促進することを目的としています。EU予算による約291億ユーロの保証を背景に、3,720億ユーロ超の公的・民間投資の動員を目指しています。
主な実績[2026年3月時点]
・EU保証承認額:約271億ユーロ
・承認プロジェクト数:363件
・実施パートナー数:18機関
支援分野
InvestEUは、EUの重点政策に基づき、以下の4つの分野を対象に投資を支援しています。
・持続可能なインフラ(99億ユーロ)
再生可能エネルギー、輸送、デジタル接続、環境・資源管理など
・研究・イノベーション・デジタル化(66億ユーロ)
研究開発、技術移転、スタートアップ支援、産業のデジタル化
・中小企業(SMEs)支援(69億ユーロ)
中小企業・スタートアップへの資金アクセス改善、成長支援
・社会的投資とスキル(28億ユーロ)
教育・医療・社会インフラ、社会的包摂、スキル開発
これらの分野では、グリーン・デジタル移行、経済のレジリエンス強化、戦略的バリューチェーンの構築など、EUにとって重要な投資が対象となります。
投資枠組み
InvestEUは、以下の2つの枠組みにより投資を実施します。
・EUコンパートメント
EU全体の政策優先分野およびEU付加価値の高い投資を対象
・加盟国コンパートメント
各加盟国の優先分野に基づく投資を対象
(加盟国は、自国のEU基金の一部をInvestEUに拠出することが可能)
加盟国コンパートメントでは、EU保証の高い信用力を活用することで、投資規模の拡大や手続きの簡素化が図られます。
実施体制(Implementing Partners)
InvestEU Fundの保証は、選定された金融機関(実施パートナー)を通じて提供されます。主なパートナーは欧州投資銀行(EIB)グループであり、EU保証の約75%を担っています。また、国立開発銀行や国際金融機関(欧州復興開発銀行等)も参加しており、各地域の市場に精通した機関を活用することがが可能となっています。
実施パートナーはこちらから確認することができます。
提供される金融手段
InvestEUでは、以下のような金融手段が、欧州投資銀行(EIB)などの実施機関を通じて提供されます。
・融資(Loans)
・保証(Guarantees)
・出資(Equity investments)
これらは、公的・民間の他の投資と組み合わせて活用されます。
InvestEUに関する詳しい実施に関する統計情報はこちらから確認できます
資金調達の対象および申請方法
■ 対象となる事業者(Who can apply)
InvestEU Fundは、国際的に認められた基準に基づき、経済的に実行可能と判断されるプロジェクトを対象に支援を行います。
対象となる主な主体は以下のとおりです:
・民間企業
SPV(特別目的会社)、プロジェクト会社、大企業、中堅企業(mid-cap)、中小企業(SMEs)
・公的機関
地方自治体を含む公共セクターおよび準公的機関
・官民連携(PPP)等の混合主体
公共目的を持つ民間企業を含む
・非営利団体(NPO等)
※これらの主体は、EU加盟国または対象となる第三国に設立されている必要があります。
申請方法(How to apply)
● 基本的な流れ
プロジェクト実施主体(プロジェクト・プロモーター)は、欧州投資銀行(EIB)等の実施パートナーに直接申請し、適切な金融手段(融資・保証・出資等)の提案を受けます。
● 金融仲介機関を通じた利用
金融仲介機関(銀行等)は、実施パートナーが提供するプログラムに基づき、地域ごとに選定されます(例:公募手続等)。
● 中小企業(SMEs)向け
中小企業や小規模事業者は、現地の商業銀行または公的金融機関を通じて申請するのが一般的です。これらの金融機関が提供する金融商品が、InvestEUの保証対象となっている場合、当該スキームを利用することが可能です。
● 金融仲介機関の検索
各国・地域の金融仲介機関については、以下のEU公式サイトから確認できます:
https://europa.eu/youreurope/business/finance-funding/getting-funding/access-finance/index_en.htm
補完的ツール
InvestEUは、資金提供に加えて、以下の2つの支援ツールを提供しています。
1, InvestEU Advisory Hub(アドバイザリー支援)
投資を成功させるためには、単に資金があるだけでは不十分であり、プロジェクトそのものが銀行融資を受けられるレベルまで成熟していなければなりません。InvestEU Advisory Hub は、このような案件形成の課題に対処するための単一窓口です 。ハブは、プロジェクトプロモーターや金融仲介機関に対し、プロジェクトの全ライフサイクルにわたる技術支援、容量構築、および市場開発支援を提供している 。InvestEU Advisory Hubは、InvestEUの政策目標に沿って、投資プロジェクトの構想から実施までを支援する技術支援の枠組みです。投資資支援のための単一の窓口として機能します。実施パートナーは、プロジェクト支援、能力開発、市場形成支援を通じてInvestEUの投資案件の創出を担います。本支援は、4つの政策分野に対応した専門的なアドバイザリーに加え、分野横断的な支援として提供されます。
■ 主な支援内容
・投資プロジェクトの特定・準備・構築・実施支援
・企業や金融仲介機関の能力強化
・市場の未成熟分野における投資機会の創出
■ 特徴
・InvestEU Fundへの申請とは別に利用可能(独立した支援サービスとして活用できる柔軟性)
・必ずしも資金支援を伴うものではない
・多くの場合、InvestEUの金融商品と連携して活用される
InvestEU Portalは、EU内の投資機会を可視化するための高度なプロジェクト・データベースです 。このポータルは、プロジェクトプロモーターには自身の案件を広く投資家にアピールする場を、投資家(日本を含む域外投資家も含む)には信頼性の高い投資案件を探索する場を、それぞれ提供しています 。掲載されるプロジェクトは、経済的実行可能性や法的整合性に関する欧州委員会による事前審査を受けており、投資家にとってのデューデリジェンスの初期コストを軽減する役割を担っていると言えます 。
本ポータルは、InvestEU FundおよびAdvisory Hubとともに、InvestEU Programmeの一部を構成しています。
■ 主な機能
・投資機会のデータベースを提供し、投資家とプロジェクト推進者をマッチング
・プロジェクト推進者が、通常では接点を持ちにくい投資家へアクセス可能
・投資家は、事前審査を経た案件の中から投資先を選定可能
■ 利用方法
プロジェクト推進者は、ポータル上で登録・ログインすることで、プロジェクトを掲載することができます。掲載は無料ですが、EUが定める適格性基準を満たす必要があります。
投資家も同様に登録することで、掲載プロジェクトの閲覧およびプロジェクト推進者とのコンタクトが可能となります。
■ 関連リンク
・ポータルへのアクセス:
https://ec.europa.eu/investeuportal/desktop/en/index.html
・掲載プロジェクト一覧:
https://ec.europa.eu/investeuportal/desktop/en/card-view.html#c,projects=+submitDateStr/asc
・成功事例(ポータルに掲載された後に資金調達を実現した企業の事例・体験談をご覧いただけます): https://ec.europa.eu/investeuportal/desktop/en/find-out-more.html#InvestEU%20Portal-storie
日本企業への示唆
・EU域内に拠点を設けることで、InvestEUの直接的な支援対象となり得ます。
・EU企業との協業や共同投資の機会が拡大します。
・InvestEU Portalを通じて、日本企業もグローバル投資家としてアクセスし、参画することが可能です。
※原則として、InvestEUの直接的な支援を受けるためには、EU加盟国等に設立されている必要があります。一方で、投資自体は第三国との協力を含む形でも実施可能です。
InvestEUの具体的な案件として、欧州投資銀行(EIB)によるドイツの地熱プロジェクトが確認されています。本件では、InvestEUが保証を提供する中で、国際協力銀行(JBIC)やみずほ銀行などの日本の金融機関も共同融資に参加しています。日本企業がInvestEUを直接活用した事例ではありませんが、同一の枠組みの中で日本側プレイヤーが関与している点で、参考となる事例です。
参考リンク
EUにおける資金調達について
- https://commission.europa.eu/funding-tenders/how-apply/you-apply-eu-funding-beginners_en
- https://commission.europa.eu/funding-tenders/how-apply/eligibility-who-can-get-funding_en
- https://commission.europa.eu/funding-tenders/how-apply/application-process_en
- https://commission.europa.eu/funding-tenders/how-apply/award-procedure-and-contract-signature_en
Invest EU Fund関連について
- InvestEU Fund - InvestEU - European Union
- InvestEU Advisory Hub - InvestEU - European Union
- InvestEU Portal - InvestEU - European Union
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