EUでは現在、脱炭素、重要原材料、交通、デジタル、自動車、化学などの分野で、産業競争力の強化と投資促進に向けた政策が相次いで打ち出されています。本ページでは、EUの主要な政策・戦略文書をもとに、今後どの分野に政策支援、規制整備、資金動員が集中していくのかを整理します。
なお、個別のEU規制・法制度への対応については、「投資に関連するEU法・制度枠組みのご紹介」 ページをご覧ください。
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特集記事:EU政策動向と投資機会
EUの主要政策・戦略文書について、日本企業によるEU投資・事業展開への示唆をより詳しく解説した特集記事を掲載しています。今後も、重要な政策発表や制度整備に応じて順次追加していきます。
・Choose Europe:日本のスタートアップにも広がる欧州進出の機会
EUでは、会社設立の簡素化、資金支援、人材受け入れなど、スタートアップの成長を後押しする政策が進められています。日本のスタートアップにとっても、欧州での実証、資金調達、パートナー形成を検討する上で注目すべき動きです。
日本語版はこちら 【PDF】/ English version here【PDF】
・「One Europe, One Market」アジェンダが拓くEU投資機会
EU単一市場のさらなる統合と規制・手続の簡素化を目指す「One Europe, One Market」アジェンダについて、日本企業によるEU投資への示唆を解説しています。
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脱炭素と競争力強化
2025年2月26日:欧州委員会、「クリーン産業ディール(Clean Industrial Deal)」を発表

© European Union, 2025 (EC Audiovisual Service, Nicolas Landemard)
概要
EU産業の脱炭素化と国際競争力の強化を同時に進めるための中核的な産業戦略。
関連分野
クリーンテック、エネルギー多消費産業、重要原材料、循環経済、低炭素製造。
日本企業への関係
EU域内での製造・投資、脱炭素プロジェクト、サプライチェーン強化、InvestEU等を通じた資金活用の可能性。
ステータス
2025年2月発表。関連法案・施策が順次公表・実施予定。
クリーン産業ディール(Clean Industrial Deal)は、EU産業の脱炭素化を進めながら、国際競争力の維持・強化を図るための産業戦略です。特に、エネルギー多消費型産業とクリーンテック産業を重点分野とし、エネルギー価格の安定化、クリーン製品への需要創出、脱炭素投資の拡大、重要原材料へのアクセス確保、循環経済の推進、人材育成、行政手続きの簡素化などを通じて、EU域内での投資環境整備を進めています。
また、欧州委員会はクリーン産業ディールを補完する枠組みとして、2026年3月に産業加速法(Industrial Accelerator Act)案を公表しました。同法案は、エネルギー多消費産業や主要インフラに関する許認可手続きの迅速化、低炭素製品の需要創出、クリーンでレジリエントな産業基盤の強化を目的とするものです。今後、欧州議会およびEU理事会での審議・採択を経て成立する必要があります。同法案の概要につきましてはこちらからもご覧ください。
日本企業にとってClean Industrial Dealは、EU域内での製造・投資、脱炭素関連事業、サプライチェーン強化、InvestEU等を通じた資金活用の可能性を検討する上で重要な政策動向です。
CIDの詳細につきましては、以下欧州委員会の公式資料をご参照ください:
・https://commission.europa.eu/topics/competitiveness/clean-industrial-deal_en
Clean Industrial Deal State Aid Framework (CISAF)
2025年6月、欧州委員会は、クリーン産業ディールの実現を支援するため、新たな国家補助枠組みである Clean Industrial Deal State Aid Framework(CISAF)を採択しました。 CISAFは2030年末まで適用され、EU加盟国がクリーンエネルギー、産業脱炭素化、クリーン技術製造などへの投資を支援しやすくすることを目的としています。
主な対象分野は以下のとおりです。
・再生可能エネルギーおよび低炭素燃料の導入拡大
・エネルギー多消費産業向けの電力価格支援
・産業プロセスの脱炭素化(電化、水素利用、CCUS等)
・電池、太陽光、風力、電解槽などクリーン技術の製造能力拡大
・クリーン産業関連プロジェクトへの民間投資のリスク低減
欧州委員会は、高いエネルギー価格や国際競争の激化を背景に、脱炭素化と産業競争力の強化を同時に進める必要があるとしています。CISAFは、加盟国による補助金や支援制度の活用を通じて、EU域内への投資促進を後押しする重要な政策枠組みとなります。
日本企業への示唆
CISAFは、EU加盟国による補助金や投資支援制度を通じて、クリーン産業分野への投資を後押しする枠組みです。EUでの製造拠点設立や設備投資、クリーンテクノロジー、水素、蓄電池、重要原材料、循環経済分野への事業展開を検討する日本企業にとって、こうした支援制度は立地選定や投資判断における重要な検討材料となります。
実際に欧州委員会は、CISAFの下で、洋上風力、クリーンテック製造、産業脱炭素化、EVバリューチェーンなどを対象とする加盟国の支援スキームを承認しています。例えば、フランスの洋上風力支援、スペイン・イタリア・ドイツ・ハンガリー・ギリシャにおけるクリーンテック製造支援、スペインの産業脱炭素化およびEV関連製造支援などが挙げられます。このため、日本企業がEUでの投資先を検討する際には、EUレベルの政策枠組みだけでなく、どの加盟国がCISAFを活用し、どの分野で具体的な支援措置を導入しているかを確認することが重要です。
関連リンク:
Clean Industrial Deal State Aid Framework
New State aid framework enables support for clean industry
Staff Working Document accompanying the CISAF
Microsoft PowerPoint - CISAF_overview of support measures.pptx
欧州委員会がCISAFの下で承認した支援スキーム
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_2583
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に沿って、クリーンテック製造能力を支援する7億ユーロのスペインの支援スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_2961
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に貢献する、クリーンテック製造能力を支援する15億ユーロのイタリアの国家補助スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_3041
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に沿って、産業の脱炭素化を支援する4億800万ユーロのスペインの国家補助スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_3091
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に貢献する、クリーンテック製造能力を支援する41億ユーロのハンガリーの国家補助スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_26_322
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に貢献する、クリーンテック製造能力を支援する30億ユーロのドイツの国家補助スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_26_449
(欧州委員会、クリーン産業ディールの目的に貢献する、クリーンテック製造能力を支援する4億ユーロのギリシャの国家補助スキームを承認)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_26_523
(欧州委員会、EVバリューチェーンにおける製造能力を支援する2億ユーロのスペインの国家補助を承認)
デジタル政策
2026年6月3日:欧州委員会、「欧州の技術主権パッケージ(European Technological Sovereignty Package)」を公表

欧州委員会は2026年6月3日、「欧州の技術主権パッケージ(European Technological Sovereignty Package)」を公表しました。本政策パッケージは、半導体、クラウド、AI、データセンター、オープンソース、エネルギー分野のデジタル化などを通じて、EUの技術基盤を強化し、過度な域外依存を低減することを目的としています。
欧州委員会は、EUがデジタル製品・サービス・インフラ・知的財産の大部分を非EUプロバイダーに依存していると指摘し、地政学的緊張やサプライチェーンの分断が進む中で、こうした依存が戦略的リスクになっていると説明しています。そのうえで、EUの技術主権を、経済・安全保障・社会を支える重要技術、インフラ、サービス、データを欧州が開発・管理・拡大できる能力として位置づけています。
今回のパッケージには、主に以下の施策が含まれます。
1. Chips Act 2.0(欧州半導体法2.0)を通じて、欧州の半導体エコシステムとサプライチェーンの強靭性を強化します。
2. クラウド・AI開発法(Cloud and AI Development Act, CADA)により、EU域内におけるクラウド・AI・データセンター基盤の整備を進めます。
3. EUオープンソース戦略(Open Source Strategy)分野におけるAI・デジタル技術の活用を進め、データセンターの持続可能性や電力システムの効率化を支援します。
4. EU全域の投資ニーズや投資準備状況に関する情報へのアクセスを簡素化するEUレベルの投資促進イニシアティブを構想します。この情報はEU域内外の投資家に開かれる予定であり、半導体、データセンター、AI関連エコシステムの可視化やマッチング機能を備えるとされています。
日本企業にとって特に注目されるのは、半導体、AIインフラ、データセンター、クラウド、サイバーセキュリティ、エネルギー関連デジタル技術などの分野です。Chips Act 2.0では、半導体バリューチェーンの主要部分として、特殊材料、製造装置、プリント基板、先端パッケージング、組立、製造中心のチップ設計活動施設などが対象に含まれる方向が示されております。また、CADAはEU全域でのデータセンター展開を簡素化・調和し、今後5〜7年で容量を3倍にすることを目指しているとしています。本パッケージは、EUの技術主権が必ずしも域外企業の排除を意味するものではなく、信頼できるパートナーとの協力や投資を通じて、EU域内の技術・産業基盤を強化するものであることを示していると言えます。日本企業にとっては、EUにおける半導体、AI、クラウド、データセンター、エネルギーAI、省エネ技術、サイバーセキュリティ分野での投資や現地パートナーシップを検討するうえで、重要な政策動向となるでしょう。
今後の動き
まず、Chips Act 2.0 や CADA などの立法案は、今後、欧州議会とEU理事会で審議されます。また、欧州委員会はAI分野の取組を進め、7月には AIギガファクトリー の公募を開始する見込みです。さらに、大規模な投資資金を確保する仕組みについて、加盟国、欧州投資銀行(EIB)グループ、関係者との協議が始まる予定です。
関連リンク:
Questions and answers on Tech Sovereignty Package
Questions and answers on Strategic Roadmap
Communication on technological sovereignty and EU Open Source Strategy
Strategic Roadmap on digitalisation and AI in the energy sector
Commission presents measures to digitalise Europe's energy system
Energy performance of data centres
How the EU is building sustainable data centres for a digital future - YouTube
重要原材料(Critical Raw Materials)

Photo credit: European Union, 2025 / EC – Audiovisual Service / Nicolas Landemard
EUは、「重要原材料法(Critical Raw Materials Act:CRMA)」に基づき、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛、レアアース、タングステン等の重要原材料について、安定的かつ持続可能な供給確保を戦略課題として位置づけています。CRMAでは、2030年までにEU域内での年間消費量に対して、採掘10%、加工40%、リサイクル25%の能力を確保すること、また特定の第三国への過度な依存を低減することが目標とされています。
戦略的プロジェクト制度
CRMAの下では、EUの重要原材料サプライチェーン強化に資する案件を「Strategic Projects(戦略的プロジェクト)」として認定する制度が設けられています。認定されたプロジェクトは、許認可手続きの迅速化、資金調達支援、関係機関・投資家・需要家との連携促進などの支援対象となります。2025年3月には、EU域内13か国から47件の戦略的プロジェクトが初めて認定されました。また、2025年6月には、EU域外に所在する13件のプロジェクトも認定されており、EU市場向けの重要原材料供給に資する第三国プロジェクトも制度的支援の対象となっています。
日本企業・日本機関の関連事例
戦略的プロジェクトへの日本企業・日本機関の関与事例として、フランス南西部ラックにおけるCaremag SASのレアアースリサイクル・精製施設が挙げられます。同プロジェクトは、CRMAに基づくStrategic Projectとして認定されており、使用済み磁石のリサイクルと鉱石由来原料の精製を通じて、永久磁石向けの重レアアース酸化物を生産する計画です。Caremagの施設は、年間2,000トンのリサイクル磁石および5,000トンの原料鉱石を処理し、ジスプロシウム、テルビウム、ネオジム、プラセオジム等の希土類酸化物を供給することを目指しています。同プロジェクトには、JOGMECおよび岩谷産業が、共同事業会社を通じて最大1.1億ユーロを出資・融資することを決定しており、Caremagで生産される重レアアース酸化物について、日本向けの長期供給契約が確保される見込みです。また、フランス政府もFrance Relance、France 2030、グリーン産業税額控除等を通じて支援を行っており、EUのStrategic Project認定、加盟国による財政支援、日本側による投資・オフテイク契約が組み合わさった重要原材料分野の代表的な事例といえます。
また、東海カーボングループのTokai COBEX Savoieが推進するフランスのBAM4EVERプロジェクトも、CRMAに基づくStrategic Projectとして認定されています。同プロジェクトは、リチウムイオン電池の負極材に用いられる電池グレード黒鉛の加工プロジェクトであり、欧州の電池バリューチェーンにおける黒鉛供給の強化に貢献するものです。
また、三菱マテリアルは、欧州において二次精錬設備の新設やタングステンの100%リサイクルを目指す方針を掲げており、EUの重要原材料法(CRMA)および循環経済政策の方向性と整合した事業戦略を打ち出しています。同社は、戦略的重要原材料の循環利用や域内リサイクル能力の強化を通じて、EUが目指す資源安全保障およびサプライチェーン強靭化に貢献する姿勢を明確にしています。
行動計画「RESourceEU」
EUは、2025年12月に発表されたCRMAを補完する行動計画「RESourceEU」を通じて、供給安定化、リサイクル能力強化、投資リスク低減、国際パートナーシップの拡大を進めています。戦略的プロジェクトへの資金支援や許認可迅速化、共同調達・オフテイク支援などが盛り込まれています。
日本企業への示唆
これらの重要原材料に関するEUの枠組みにより、EU域内での事業展開に加え、第三国における資源開発・加工・リサイクル等のプロジェクトを通じてEU市場に関与する可能性が、制度的に明確化されています。戦略的プロジェクトの選定や金融デリスキング手段、第三国との協力枠組みを通じて、EU市場向け供給を前提とする域外プロジェクトも、資金支援や規制上の支援の対象となり得ることが示されています。重要原材料分野に関心を持つ日本企業にとって、EUとの協力や共同投資を検討する際の政策的基盤が整理されつつある点が注目されます。
関連リンク:
European Critical Raw Materials Act - European Commission
Selected strategic projects under CRMA
Strategic project - Publications Office of the EU
Strategic project - Publications Office of the EU
日仏両政府が連携し、フランス共和国内の重レアアースプロジェクトを支援します (METI/経済産業省)
日仏連携で欧州初のレアアースリサイクル工場建設に着工(日本、フランス) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
Equity and Debt Financing to Caremag SAS Project participation to diversify rare earth sources
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運輸・交通分野(Transport Package)

© European Union, 2025 — EC Audiovisual Service Photo: Bogdan Hoyaux
概要
高速鉄道の展開加速と、航空・海上輸送における再生可能・低炭素燃料への移行を進めるための政策パッケージ。
関連分野
高速鉄道、TEN-T、鉄道インフラ、信号・制御、航空燃料、海運燃料、水素、eSAF、低炭素燃料。
日本企業への関係
鉄道車両、信号・制御、建設、デジタル技術、持続可能燃料の製造・供給、関連インフラ分野での事業機会。
ステータス
2025年11月5日採択。高速鉄道行動計画と持続可能な交通投資計画(STIP)を含む。
EUは2025年11月5日、高速鉄道の展開加速と、航空・海上輸送における再生可能・低炭素燃料への移行を柱とする運輸パッケージを採択しました。本パッケージは、EUの運輸システムをより効率的で相互接続性が高く、クリーンかつ強靭なものへ転換することを目的としています。
高速鉄道行動計画では、2040年までに相互運用可能な欧州高速鉄道ネットワークを構築することを目指しています。TEN-T規則に基づき、主要都市間を時速200km超で結ぶことで、移動時間の短縮と域内接続性の向上を図ります。国境間インフラのボトルネック解消、高速運行に向けた技術・運用条件の整備、資金動員、標準化・認証を含むEUレベルでのガバナンス強化が主な柱です。
また、持続可能な交通投資計画(Sustainable Transport Investment Plan:STIP)は、航空・海上輸送分野における再生可能・低炭素燃料への投資促進を目的としています。RefuelEU AviationおよびFuelEU Maritimeの目標達成に向け、2035年までに約2,000万トンの持続可能燃料供給が必要とされ、InvestEU、イノベーション基金、欧州水素銀行、Horizon Europeなどを通じた資金動員が進められる予定です。
日本企業にとっては、高速鉄道、交通インフラ、信号・制御、建設、デジタル技術に加え、持続可能燃料の製造・供給、関連インフラ分野で、EU市場を前提とした投資・事業参画の可能性を検討する上で重要な政策動向です。
◆詳細情報
Communication from the Commission: Connecting Europe through High-Speed Rail
Communication from the Commission: Sustainable Transport Investment Plan
Questions and answers – European high-speed rail network Plan
Questions and answers – Sustainable Transport Investment Plan
Factsheet – European high-speed rail network Plan
Factsheet - Sustainable Transport Investment Plan
News item - Commission launches plan to accelerate high-speed rail across Europe
Webpage - High-speed rail plan - Mobility and Transport - European Commission
Webpage - Sustainable transport investment plan - Mobility and Transport
自動車産業

EUは、国際競争の激化や技術革新への対応を背景に、域内自動車産業の競争力維持と生産基盤の確保を目的とした「自動車部門に関する産業行動計画」を2025年3月5日に発表しました。本計画は、自動車産業におけるイノベーション、サプライチェーン、雇用、規制環境を包括的に扱う産業政策パッケージとして位置づけられています。
サプライチェーン強化と戦略的自律
EUは、特にバッテリー原材料を含む自動車サプライチェーンの強化を重要課題として位置づけ、約18億ユーロの投資を通じて安全で競争力のある供給網の構築を目指しています。 イノベーション基金等を通じたバッテリー産業支援の継続や、バッテリー部品に対する非価格基準の検討など、域内生産と持続可能性を重視する政策方向が示されています。
イノベーションと次世代モビリティ
次世代モビリティ分野では、European Connected and Autonomous Vehicle Allianceの設立により、コネクテッド・自動運転技術の共同開発を促進します。大規模試験場や規制サンドボックスの整備、自動運転に関する規制枠組みの発展、2025~2027年に約10億ユーロ(Horizon Europe)規模の官民投資などを通じ、技術開発と社会実装の加速が図られています。
国際競争力と公平な競争環境
EUは、反補助金措置などの通商防衛手段の活用を通じ、不公正な競争から域内産業を保護する姿勢を示しています。同時に、パートナー国との交渉による市場アクセス改善や、外国投資が欧州自動車産業の長期競争力に資する形で行われるための条件整備、規制簡素化による行政負担軽減も盛り込まれています。
CO₂基準と規制上の柔軟性
また、欧州委員会は2025年12月に、自動車産業のクリーンモビリティ移行を支援する「自動車パッケージ」において、2035年以降の新車に関する排出規制の枠組みの見直しを発表しました。従来、「2035年以降は事実上、内燃機関車の新車販売が禁止される」と受け止められてきた方針について、ゼロエミッション車(ZEV)への方向性は維持しつつ、達成手段における柔軟性を制度的に明確化しています。 具体的には、2035年以降の乗用車に対し、テールパイプ排出量90%削減を義務付ける一方、残る10%については、EU域内製の低炭素鋼材の使用や、e-fuel、バイオ燃料の活用による相殺を認めています。これにより、プラグイン・ハイブリッド車や内燃機関車についても、一定条件の下で2035年以降に役割を果たし得るとされています。
日本企業への示唆
EUは、自動車産業を戦略的分野として位置づけ、電動化、自動運転、バッテリーを中心に、域内の生産基盤や技術開発、サプライチェーンの強化を進めています。これにより、自動車関連分野では、研究開発、実証、製造、部品供給までを含む形で、EU域内での産業構造の再編が進みつつあります。また、CO₂排出基準や技術規制については、目標水準を維持しながらも、移行期における柔軟性や予見性を確保する方向性が示されています。
こうした政策の方向性を踏まえると、日本企業にとっては、単に製品をEUに売るか、現地進出するかではなく、研究開発や生産、サプライチェーンのどの部分でEUと関わるかが、今後のビジネス機会を左右する要素になりつつあります。
◆詳細情報
Communication: Industrial Action Plan for the European automotive sector
Communication: Decarbonise Corporate Fleets
Factsheet - Action Plan on the future of the automotive sector
Factsheet - Decarbonise Corporate Fleets
スタートアップ支援
2025年5月:欧州委員会、「EU Startup and Scaleup Strategy」を公表

Photo credit: European Union, 2025 / EC Audiovisual Service / Nicolas Landemard
欧州委員会は2025年5月、「EU Startup and Scaleup Strategy」を公表しました。これは、EUをスタートアップやスケールアップ企業が創業・成長し、グローバルに展開するための拠点にすることを目指す戦略です。 EUは高い研究開発力や産業基盤を有する一方、加盟国ごとの制度差、資金調達、人材確保、規制対応の複雑さがスタートアップの成長課題となってきました。本戦略は、欧州での法人設立、資金調達、人材確保、実証、市場展開を後押しする包括的な政策パッケージです。日本のスタートアップにとっても、欧州を販売市場にとどまらず、研究開発、実証、資金調達、パートナー形成、スケールアップの拠点として検討する上で重要な政策動向です。
会社設立の簡素化
本戦略では、加盟国ごとに異なる会社法・税制・労働法などの負担を軽減するため、いわゆる 28th regime の導入が掲げられました。その後、欧州委員会は2026年3月18日、これを具体化する 「EU Inc. 規則案(COM(2026) 321 final)」 を正式に提案しました。同規則案では、最低資本金1ユーロ、最大登録手数料100ユーロ、完全オンラインで48時間以内の登記などが提案されています。今後、EU理事会および欧州議会で審議される予定です。
行政手続きのデジタル化
企業と行政機関のやり取りをデジタル化する European Business Wallet も本戦略で掲げられました。企業情報や証明書類をデジタルで管理・共有し、登録、申請、許認可などの手続きを簡素化することが期待されています。欧州委員会は2025年11月19日、「European Business Wallet 規則案(COM(2025) 838 final)」 を正式に公表しており、今後、欧州議会およびEU理事会で審議される予定です。
資金支援の強化
本戦略では、ディープテック企業向け支援を担う European Innovation Council(EIC) の拡充や、成長段階の企業への大型資金供給を目指す Scaleup Europe Fund の創設が掲げられています。Scaleup Europe Fundは目標総額50億ユーロ規模とされ、2026年4月にはEIC Fund理事会がスウェーデンの投資会社 EQT を公式のファンドマネージャー、または優先投資アドバイザーとして選定しました。
高度人材・起業家の受け入れ
EU域内外から高度人材、研究者、起業家、技術者を呼び込むため、Blue Carpet Initiative も掲げられています。EU Blue Cardや今後のEU Visa Strategyを活用し、第三国からの高度人材や起業家をEUに引き付ける方針です。特に、スタートアップ創業者が居住・就労許可をより迅速に取得できるファストトラック制度の整備が促されています。
最新情報
2026年5月には、欧州委員会が同戦略の一環として、初の「European Startup and Scaleup Scoreboard(ESSS)」を公表しました。同スコアボードは、規制環境、資金調達、市場展開、人材、インフラなどの観点からEU加盟国のスタートアップ・エコシステムを比較するものです。2020年以降、27加盟国のうち20か国で改善が見られ、特にエストニア、スウェーデン、フィンランド、オランダ、デンマークが先行国とされています。日本のスタートアップにとっても、欧州での資金調達、実証、パートナー形成、事業拡大を検討する上で参考となる動向です。詳しくはこちらから!
関連情報として、「Choose Europe:日本のスタートアップにも広がる欧州進出の機会」も公開しています。EUで進む会社設立の簡素化、資金支援、人材受け入れなど、日本のスタートアップに関連する政策動向を紹介しています。
日本語版はこちら【PDF】/ English version here【PDF】
◆詳細情報
EU Startup and Scaleup Strategy - Research and innovation
Commission presents proposal for EU Inc.
EUR-Lex - 52026PC0321 - EN - EUR-Lex
EUR-Lex - 52025PC0838 - EN - EUR-Lex
European Innovation Council - European Innovation Council
Scaleup Europe Fund - European Innovation Council - European Commission
EQT selected to lead the Scaleup Europe Fund
Commission launches ambitious Strategy to make Europe a startup and scaleup powerhouse
今後追加予定の分野
本ページでは、EUの政策動向や制度整備に応じて、以下の分野についても順次情報を追加していく予定です。
- AI・デジタル戦略
AI、データ、クラウド、デジタルインフラ、サイバーセキュリティ等に関するEU政策動向 - 投資戦略
EU域内投資の促進、資金支援、投資環境整備、単一市場改革に関する政策動向 - 再生プラスチック
循環経済、包装、リサイクル材利用、再生プラスチック市場形成に関する政策動向 - 化学製品
化学産業の競争力、規制簡素化、持続可能な化学物質管理に関する政策動向
免責事項
日欧産業協力センターは、本ウェブページで紹介されている募集や提案には一切関与しておらず、これらに関連して提出された質問や申し出の受付・処理も行っておりません。
本ウェブページの内容は、一般的な情報提供および非商業的な目的のみに限り利用可能です。また、その内容について、網羅性や最新性を保証するものではなく、法的またはその他の助言を提供することを目的としたものではありません。本ウェブページの内容に基づいて行動される場合には、必ず適切な資格を有する専門家の助言を受けていただくようお願いいたします。
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