EUによる最新のイニシアチブのまとめ
このページでは、各分野におけるEUの最新の動向をまとめます。
希少原材料
「重要原材料法(CRMA)」に基づき47事業を初の戦略的プロジェクトとして認定
欧州委員会は3月26日、重要原材料法(CRMA)に基づきEU13か国*から47事業を戦略的プロジェクトとして同法の発効後初めて認定しました。(*イタリア、エストニア、ギリシャ、スウェーデン、スペイン、ドイツ、チェコ、ベルギー、フィンランド、フランス、ポルトガル、ポーランド、ルーマニア)
重要原材料法は、重要原材料を主に域内で採掘、加工、リサイクルする事業を支援する戦略的事業制度を導入するもので、この認定を受けた戦略的事業は、プロジェクトを進める際の許認可手続きの簡略化や迅速化のほか、オフテイカーとの連携支援、資金調達へのアクセスにおいて優遇を受けることができます。47事業のうち25件は採掘、24件は加工、10件はリサイクル、そして2件が代替原材料関連の事業でした。またこれらの戦略的プロジェクトは、17の戦略的原材料のうち14をカバーしています。(そのうち主要な原材料:リチウム(22件)、ニッケル(12件)、コバルト(10件)、マンガン(7件)、黒鉛(11件))特にバッテリーのEUにおけるバリューチェーンに大いに利益をもたらすと見込まれ、これらのプロジェクトは、2030年までのヨーロッパで必要とされる採掘量の10%、加工量の40%、リサイクル量の25%を域内でカバーするという目標に貢献するとされています。東海カーボンのグループ企業であるTokai COBEX Savoieも黒鉛に関連する事業としてこの度認定を受けています。
戦略的プロジェクトとして認定された47の事業についてのまとめはこちら。
自動車
(欧州委員会、2025)
「自動車部門に関する産業行動計画」の発表
欧州委員会は3月5日、欧州の自動車産業の競争力強化のため同産業との対話を通し「自動車部門に関する産業行動計画」を発表しました。同計画は下記に焦点を当て、化石燃料への依存と生産コストの削減、イノベーションの促進を通して欧州における脱炭素化を加速させます。
・デジタル・イノベーションとクリーン・モビリティ:自動車のAI搭載・ソフトウェア開発を促進、EV車の充電ポイントの拡大、CO2基準規制をより柔軟化。
・サプライチェーン、国際競争力と労働者支援の強化:特にバッテリー産業への投資を拡大。
・EU企業のため公正な競争条件の確保と域外からの投資がEU自動車産業の成長に貢献することを保証。
AI
(AIファクトリーの分布 欧州委員会、2025年)
「AI大陸行動計画」の発表
欧州委員会は4月9日、人工知能で世界をリードすることへのコミットメントとして「AI大陸行動計画」を発表しました。この計画は5つの大きな柱から成ります。
①大規模なAIデータおよびコンピューティング・インフラの構築:13のAIファクトリーを設立し最先端の研究を支援。そのうち5つのギガファクトリーにおいては民間投資を促進して200億ユーロを動員し大規模で複雑な研究開発を可能にします。また欧州委員会は「クラウドおよびAI開発法案」を発表し、今後5~7年以内にEUのデータセンター容量を少なくとも3倍へ増強することを目指します。
②高品質なデータへのアクセスの拡大:内部データ市場を育成するデータ統合政策はEU全体でのAI開発の拡大を後押しします。AIファクトリー内にデータラボを設置し、多様なソースから高品質なデータを収集・整理します。
③AIスキルと人材の養成:AIスキルアカデミーやAIフェローシップ制度の設立、また高度なAIスキルを持つEU域外のタレント誘致を目指し、国際的な採用を進めることで人材育成を支援します。
④AIアルゴリズム開発とAIの利用促進:ヘルスケアや自動車、高度製造業などの戦略的分野をはじめ民間・公共機関におけるAI採用を促進。
⑤AI規制の簡素化:市民やビジネスへ安定性を提供するため、AI法サービスデスクを2025年夏に設立するなどAI法確実な拡大と導入のためガイダンスの充実させます。
バイオテクノロジー
(欧州委員会、2025年)
「EUバイオテクノロジーハブ」の開設
スタートアップから事業拡大まで、このページはEUにおいてバイオテクノロジーおよびバイオ製造業で成功するためのツールやリソースを提供しています。バイオテクノロジー・ソリューションのEU市場開拓、研究インフラ、その他事業の拡大に必要な情報が掲載されていますので、ぜひご活用ください。
公式サイトはこちら。
産業政策包括
(欧州委員会「Factsheet - Single Market Strategy」より、2025年)
単一市場をシンプルかつシームレスで強固なものにするための戦略(5月21日リリース)
欧州委員会は21日、よりシンプルかつ強固な欧州域内市場を構築するための単一市場戦略を発表しました。この戦略は、EU域内貿易と投資を阻害する既存の障壁を削減し、中小企業の事業運営と事業拡大を支援、デジタル化を促進することで企業の負担を軽減するための行動を定めています。
新たな単一市場戦略はいくつかの優先事項に重点を置いています。
障壁(Terrible Ten)の撤廃:複雑な事業設立および運営、複雑なEU規則、加盟国による責任力の欠如、専門資格の限定的な認定、共通規格の欠如、包装に関する断片的な規則、製品コンプライアンスの欠如、制限的でばらつきのある加盟国内サービス規制、派遣労働者の赴任に関する煩雑な手続き、消費者に対し価格の高騰を引き起こす不当な地域的供給制約。
域内のサービス部門に新たな活力:建設サービス法および新たなEU配送法を提案し、建設分野と郵便・小包分野の両方の規則を近代化する。
また中小企業が単一市場の事業拡大の機会を最大限に活用できるよう、欧州委員会は中小規模企業(SMC)の新たな定義を導入し、中小企業に付与されている特典の一部をこれらの中小企業にも適用します。
(欧州委員会「Clean Industrial Deal fact Sheet」より、2025年)
「クリーン産業ディール」で産業競争力と脱炭素化を加速。(2月26日リリース)
欧州委員会は26日、新たな政策戦略である「クリーン産業ディール」を発表しました。エナジー集約型産業(鉄鋼、金属、化学品など。脱炭素化、クリーンエネルギーへの転換、高コスト、不公平な国際競争、複雑な規制への対応などにより緊急に支援が必要な産業)と、産業変革・循環性・脱炭素化に不可欠であるクリーン・テック産業に焦点を当てるこのイニシアティブは、エナジーコストの高騰、クリーン技術への投資格差、また欧州の重要原材料への依存といった主要課題に対処するための方策を明記しています。具体的な目標は以下です。
①クリーンエネルギー・電化の加速・内部市場の進化・輸入化石燃料への脱依存を進めてエナジーコストの削減。
②産業脱炭素化法によるEU産クリーン製品需要の拡大、「メイド・イン・ヨーロッパ」基準を公共および民間の調達に導入、持続可能性、回復力、欧州産優先基準の導入など公共調達の制度見直し
③クリーン産業をへの投資を支援するための「脱炭素化銀行」また「イノベーション基金」による1000億ユーロの拠出、産業の脱炭素化と製造能力確保のための政府援助の承認加速
④CRM(重要原材料)への欧州企業による需要集約の仕組み構築など、限られた資源を効率的に活用するシステムの構築、循環型経済の加速化
⑤相互に利益をもたらすクリーン貿易・対外投資パートナーシップ、サプライチェーン多様化を通しての安全保障強化
⑥クリーンテックなどのスタートアップの含めたスキル開発への援助。質の高い労働力を養うための支援
⑦企業向けに複雑な規制や行政手続きの簡素化、特に中小企業など向けの国家補助規則の簡素化とスピードアップ
「EU競争力コンパス」と簡素化包括パッケージについて (2025年1月29日リリース)
EUは「競争力コンパス」を含めた現体制2期目の新たな活動指針を公開しました。
- 第1の柱としてのデジタル化とイノベーション。「競争力コンパス」は革新的な企業の成長を後押しする環境形成、さらなるデジタル化とディープテックに基づく高成長セクターにおけるイノベーションと産業リーダーシップ形成促進を目指す。
- 第2の柱としての脱炭素化と循環型経済へのアプローチ。クリーンで手頃な価格のエネルギーへのアクセスを促進するための対策を定義。魅力的な製造拠点としてのEUを強化し、クリーンテクノロジーと循環型ビジネスモデルの促進をサポート、競争力と脱炭素化アプローチを同時追求。
- 第3の柱としての安全保障と脱依存。EUのサプライ チェーンを多様化する能力は、第三国との効果的なパートナーシップを通じて強化される。競争力コンパスは安全性と競争力を高めるために、クリーンな貿易と投資のためのパートナーシップの強化を目指す。
EU経済への5つの具体的措置
- オムニバス・パッケージによる持続可能性報告、デューデリジェンス、および EU タクソノミーの手順簡素化。
- 単一市場への障壁の撤廃:特に中小企業や新興企業向けの標準化手続きの迅速化と簡素化。中規模企業(「中堅・中小企業」)は、カスタマイズされた規制によって支援される。
- 資金調達へのアクセスを容易にし、より戦略的で効率的な投資環境を目指す。
- 生涯学習、熟練労働者の統合、流動性の促進に焦点を当てて質の高い雇用を促進。
- EU域内での共通政治目標の実現、より良い調整を競争力に繋げる。
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