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ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ 2025年度派遣

語学研修地・企業研修地:ドイツ・ミュンヘン
派遣企業:nextnanoGmbH
応募時の学年:東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程1


【プログラムへの参加理由】

私がヴルカヌス・イン・ヨーロッパ(VinE)プログラムに応募した理由は、研究で培ってきた専門性を、実際の産業や国際的な現場で試してみたいと考えたからです。博士課程で物性物理を研究する中で、理論や数値シミュレーションが実際のデバイス開発や製品設計にどのように活かされているのかを、現場で学びたいという思いが強くなりました。

VinEは、語学研修と企業研修を一体として経験できる点に大きな魅力があります。企業研修に入る前に、語学力の向上だけでなく、海外での生活や文化に段階的に慣れるための期間が設けられていることで、現地の環境に無理なく適応した上で研修に臨むことができると感じました。専門性を深めながら、異文化・多国籍の環境で働く準備を丁寧に整えてくれるこのプログラムは、自身の将来像を考える上でも非常に貴重な機会だと考え、参加を決意しました。


【語学研修について】

語学研修は、20256月から20258月末までの約3か月間行われました。この期間に、日常会話だけでなく、自分の意見を伝え、議論するための語学力を重点的に鍛えることができました。私はCEFRA2レベルから研修をスタートし、約2か月半後のテストに合格して、B1レベルの途中まで授業を受けました。

語学研修はスピーキングに重点を置いた構成で、慣れない言語環境の中で集中的に学ぶため、非常に密度の高い時間だったと感じています。

また、私が参加した6月のタイミングでは、4月からヨーロッパの研究者向けプログラムで来ていたポスドクや教授の方々と同じクラスで学ぶ機会がありました。研究経験やバックグラウンドの異なる参加者との交流を通じて、ドイツ語だけでなく英語でのコミュニケーションも自然に行うことができ、多国籍な環境で意見を伝え合う経験は自分にとって大きな刺激となりました。食事や休憩時間のコーヒーブレイクに誘っていただくことも多く、この期間を大変なだけでなく、楽しく過ごすことができました。

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【企業研修について】

インターンシップだから最初の1週間は研修でもするのかなと思っていましたが、いざ企業研修の初日に会社に向かうと、まさかの「仕事探し」から始まりました。

企業研修では、半導体デバイスシミュレーションソフトウェアを開発するnextnanoGmbHにて、20259月から20263月までの間、研究開発業務に携わりました。大学で培った理論的知識を基に、実際に研究や産業の現場で使われるシミュレーション技術に取り組み、データ解析やモデル構築、結果の整理・文書化までを一貫して経験しました。

特に、文献や理論式を踏まえながらシミュレーション条件を検討し、計算結果を検証・考察するプロセスを通じて、研究を「再現性のある形で共有する」ことの重要性を強く実感しました。また、開発者や研究者との議論を通して、専門的な内容を簡潔かつ論理的に伝える力の必要性を学び、研究成果をチームで活かす視点を養うことができました。

私自身の専門は実験物理であるため、今回の研修では理論計算や数値シミュレーションといった理論物理的な側面について、多くのことを教えていただき、それをアウトプットする機会に恵まれました。


VinEを通して得たこと、今後の展望】

VinEを通して、専門的なスキルと自己管理の両面で成長を実感しました。私は実験物理を専門としているため、企業研修では理論計算や数値シミュレーションにおける考え方や作法を、基礎から丁寧に学ぶ機会を多く得ることができました。理論と計算を通して現象をどのように捉え、結果をどのように検証・共有するかを学んだことは、自身の研究スタイルを広げる大きな経験となりました。当初は、自身の専門分野との違いから一定のギャップを感じる場面もありましたが、研修を通して徐々に理解が深まり、業務を進める上で気にならない程度まで適応できたと感じています。

その一方で、学ぶ立場であることを常に意識し、研究成果や進捗の共有をできるだけ早く行うことに加え、メールへの迅速な返信や日常的な挨拶といった、専門性に依らず実践できる基本的な点を大切にしました。こうした姿勢によって、相手に余計な負担やストレスを与えないよう心がけました。

語学研修と企業研修は期間ごとに段階的に進められており、それぞれに集中して取り組む必要がありました。その結果、研修全体として非常に密度の高い時間となり、集中力やメンタルの維持が重要であると実感しました。その中で、私にとって大きな支えとなったのがランニングでした。定期的に走ることで頭を整理し、心身のリズムを整えることができ、研修に前向きに取り組み続ける上で大きな助けとなりました。また、Altöttingハーフマラソン大会への参加をきっかけに、研修先の上司からAnzigのランニング大会(ForstlaufinAnzing)に誘っていただき、出場しました。

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スポーツを通じた交流によって、職場や現地でのコミュニケーションより円滑になり、国籍や立場を越えた信頼関係を築く一助になったと感じています。さらに、ミュンヘンマラソンに出場した際には、同居していたルームメイト兼オーナーの方が結果を喜んでくださり、日常的な会話や交流がより深まりました。海外生活では職場以外の人間関係も心の安定に大きく影響しますが、こうした経験を通して、地域や身近な人とのつながりを自然に築くことができました。

VinEは、専門性を磨くだけでなく、自分自身をどのようにマネジメントし、国際的な環境で人と関わっていくかを学ぶ貴重な経験でした。今後はこの経験を活かし、研究と社会をつなぐ役割を果たせる研究者・技術者として成長していきたいと考えています。


【これから応募を考えている方へ】

私自身、応募当初は海外の環境や企業研修に上手く適応できるのかという不安がありました。特に、自分にはまだ足りていない能力があると感じていたからこそ、挑戦することに迷いもありました。

しかし、VinEはそうした不安やギャップを前提とした上で、段階的に成長できる環境が用意されているプログラムだと感じています。自分ではまだ適応しきれていないと感じている部分こそが伸びしろであり、それを実際に成長へとつなげられる貴重な機会でした。

また、これまでにVinEを経験されたOBOGの方々が築いてきた信頼や実績があるからこそ、安心して挑戦できる環境が整っていると感じました。加えて、プログラムを支えてくださるスタッフの方々が、参加者一人ひとりを丁寧にサポートしてくださる点にも深い敬意を抱いています。

少しでも海外で挑戦してみたい、自分の専門をより広い世界で活かしたいと考えている方には、ぜひ一歩踏み出してほしいと思います。応援しています。

 

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