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佐藤美乃梨
ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ 2022年度派遣

語学研修:スペイン語
企業研修::IDIADA AUTOMOTIVE TECHNOLOGY SA
大学:(応募当時)東京大学工学部社会基盤学科 3 年

 

0.はじめに

私は大学入学後、あらゆる情報に翻弄され手当たり次第にゼミや課外活動に手を付けた結果、全てが中途半端になり燃え尽きていました。

大学 3 年の夏、周囲が就活か大学院進学かを考える時期になりましたが、自分は本当にそれでいいのか一度立ち止まる必要があるのではないかと思っていました。

一方で、「いつか海外で働いてみたい」「私の性格を考えると、ヨーロッパの方があっているのではないか」という漠然とした思いがあり、プログラムを探していたところ Vulcanus in Europe に出会いました。

 

1.応募

私の大学では、2 年の後期から専門課程が始まります。高専にも通っていない学部 3 年で、過去の企業リストにあまり載っていない土木系を勉強しているので、合格は難しいのではないかと感じていました。実際に 2 次の面接後に企業リストを見ると、学歴要件として修士課程以上を求められていたり、分野も IT 系や機械系が多かったりと選択肢が少なく、どの企業に応募をするか迷いました。

しかし、将来の進路に迷っていて、プログラムの経験次第では大学院での専攻も変えることのできる学部 3 年だからこそ、今応募する必要があるのだ、ということをアピールして、無事にスペインの自動車関連会社からオファーを頂くことができました。

自分の専攻と全く関係のない業界で、さらに未知の言語圏で働くことの大変さは、当時は分かっていませんでした。

 

2.語学研修

私たちの代はコロナのため語学研修はオンラインで行われました。

オンラインの授業は平日の 16 時から 21 時とかなりハードでしたが、スペイン語は全くの 0 から 7 月の最後には B1.1 レベルまで達することができました(しかし、スペインに到着した時にはだいぶ忘れてしまっていました)。

4 月からスペインに行けなかったのは残念でしたが、スペイン派遣の人と時々zoomで話したり、出国前の不安を相談したりして、研修への期待が高まりました。

 

3. スペインでの生活

・研修について

企業研修は辛さ 8 割、楽しさ 2 割でした。

私が働いていたのは IDIADA の中の自動車の衝突試験を実施する部署で、主に衝突試験のための自動車の状態確認や衝突後のレポートの作成を行っていました。

最も辛かったのは、同僚が何を言っているのか分からず、自分が何の価値も発揮できなかったことです。「スペイン語も話せない、何で来たのかよく分からないアジア人」として会社にいることを毎日突き付けられながら仕事をしていました。メンターは日本人の女性でしたが、彼女も含め同僚はみな流暢なスペイン語を話し、気を遣って私にだけ英語で話しかけてくれることに対して申し訳なく思っていました。また、前述の通り自動車のことは全く知らなかったので、質問をしても何を言っているのか要領を得ないことも多かったです。

この状況が続くのが非常にストレスだったので、スペイン語の能力を向上させることを最優先とし、2023 年 4 月にスペイン語検定である DELEB2 を取ることを一つの目標に設定しました。平日の通勤時にはリスニングや単語をやり、会社が終わってそのままスペイン語の語学学校に行き、家に帰ってからオンライン会話をして、文法書を解き…とほぼスペイン語漬けの勉強を数カ月続けました。他のスペイン派遣の人たちも、みな同様に言語で悩んでいたので、お互いに励まし合って勉強をしていました。

自動車の知識に関しては、時間がある時に過去の会社のレポートを読んだり、インターネット上にある自動車産業に関するレポートを読んだりして補いました。

会社では辛いことばかりではありませんでした。

私の部署では現地の大学生がインターンで数人来ており、彼らはとても私に良くしてくれて、しょっちゅう話しかけてくれました。会社のクリスマスパーティー、同僚のお別れ会などにも招待してもらい、本当に素敵な時間を過ごすことができました。メンターも含め、ロールモデルとなるような人たちにも出会うことができ、仕事に対する姿勢を学ばせていただきました。研修最終日には、サプライズで同僚から色紙やたくさんのお土産をいただき、嬉しくて半泣きになったのを覚えています。この年に参加しなかったら、もう一生会えないだろう人達に出会い、そこでしかを学べないことを多く吸収できたことは幸せでした。

・プライベート

スペインに来たヴルカヌス生は口をそろえて羨ましいと言いますが、スペインは確かに人が優しくおおらかで、ご飯は美味しく、物価はEUにしては安く、雨が降った日は滞在中5日くらいと天国のような場所でした。私はバルセロナに住んでいたので、スペイン語と日本語の言語交換会に定期的に行ったり、ガウディ建築や美術館を巡ったりと、私生活は非常に充実していました。IDIADA の派遣生と一緒にご飯を食べたり、遠出をしたりして交流が深められたのも良い思い出です。

 

4.研修後

スペイン語については、目標にしていた B2 に帰国後無事合格することができました。また、スペイン語と自分の専門知識が生かせる次のチャンスを見つけ、現在はそれに向かって準備をしているところです。また、せっかく身に着いた知識を使わないのはもったいない、さらに自動車について勉強したいと思うようになったのも研修前には想像しなかったことだと思います。研修が終わってからも日本からテレワークをしたい、とお願いしたところ快諾してくださり、現在もアルバイトという形で働いています。

 

5.プログラムを振り返って

今までの人生で間違いなく一番濃密な時間を過ごせました。

Vulcanusの体験記には、研修先での実績や充実した生活などが多く掲載されており、私もそのようなことを夢見てプログラムに参加しました。しかし、居心地の良い日本を飛び出して、素の自分では何もできない、海外で友達の作り方や一人の時間の使い方が分からないという現実に直面しました。スペインに来た初日はエレベーターの使い方さえ分かりませんでした。住民登録も市役所の人が何を言っているのか分からなくて、何度も足を運びました。研修中も就活や大学院のことが頭によぎり、辞めたいと思っていたこともありました。3 月の最後のランチまでネイティブの会話にはついていけなくて、ほとんど曖昧に笑って過ごしていました。

しかし、そこで絶望せずに、今の自分だったら何ができるのか向き合った結果、思いもよらない収穫を手にしました。もちろん、私が得たのは自動車の衝突試験の知識だけではありません。

きっと、これから参加される方も想像できないような嬉しさや苦労を経験することになると思いますが、それをどう生かすかでプログラムの価値が決まると言っても過言ではありません。

また、1 人 1 人が違う個性を持ったヴルカヌス生と、この 1 年を過ごすことが出来て本当に幸運でした。集まって観光したり、ご飯を作ったり、夜な夜な話をしたりしたのも良い思い出です。

当時学部 3 年生の私にこのような機会をいただけたことに、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

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